株主総会における円滑な進行を目的として、特定の株主に金品を渡したり、特別な便宜を図ったりする行為は、会社法第970条によって厳しく禁止されています。
いわゆる「総会屋」対策として生まれたこの規定ですが、現代では「特定の株主への優遇」全般に関わる重要なリスク管理事項です。本記事では、利益供与の罪の構成要件から重い罰則までを解説します。
いわゆる「総会屋」対策として生まれたこの規定ですが、現代では「特定の株主への優遇」全般に関わる重要なリスク管理事項です。本記事では、利益供与の罪の構成要件から重い罰則までを解説します。
1. 利益供与の罪(会社法970条)とは
利益供与の罪とは、株式会社の取締役などが、株主の権利行使(議決権の行使など)に関して、会社や子会社の計算で財産上の利益を供与する行為を指します。
この法律の目的は、株主総会の公正さを保ち、会社財産の浪費を防ぐことにあります。「総会を荒らさないでほしい」「経営陣に有利な票を投じてほしい」といった依頼と共に利益を渡すことは、明確な法律違反です。 [1]
2. 利益供与が成立する「構成要件」
以下の条件を満たすと、利益供与の罪が成立します。
① 主体(誰が)
- 取締役、執行役、監査役、会計参与
- 支配人、その他の従業員など
② 行為(何をしたか)
- 株主の権利行使に関して: 議決権の行使、帳簿閲覧権の行使、株主代表訴訟の提起・不提起などに関連して利益を渡すこと。
- 財産上の利益を供与: 現金、贈答品、接待、不当に安い価格での商品販売、借金の肩代わりなどが含まれます。
③ 「推定規定」に注意(第970条2項)
特定の株主に対して「無償」または「著しく低い対価」で利益を与えた場合、法律上、それは「株主の権利行使に関して行ったものと推定」されます。つまり、会社側が「権利行使とは無関係だ」と証明できない限り、罪に問われる可能性が高くなります。
3. 利益供与の罪の罰則
この罪は、渡した側(会社側)だけでなく、要求した側や受け取った側(株主側)も処罰の対象となります。
- 供与した者(役員等): 3年以下の懲役 または 300万円以下の罰金。
- 利益を受けた者(株主等): 3年以下の懲役 または 300万円以下の罰金。
4. 民事上の責任(利益の返還義務)
刑事罰とは別に、会社法第120条に基づき、以下の民事責任が発生します。
- 返還義務: 利益を受けた株主は、会社に対してその利益を返さなければなりません。
- 役員の連帯責任: 利益供与に関与した取締役などは、会社に対してその利益相当額を支払う連帯責任を負います(無過失責任に近い厳しい責任です)。
5. まとめ
会社法第970条の「利益供与の罪」は、健全なコーポレートガバナンス(企業統治)の根幹を支える規定です。特定の株主からの要望や圧力に屈して利益を提供することは、経営陣自身の刑事罰や賠償責任に直結します。
クリーンな株主総会運営のために、利益供与防止のガイドライン策定と徹底が不可欠です。
クリーンな株主総会運営のために、利益供与防止のガイドライン策定と徹底が不可欠です。